Dreambladeが教えてくれた教訓

ピーター・ジャン
Translated by Yoshiya Shindo
(元記事:http://www.starcitygames.com/php/news/article/14644.html

(文中黄枠部分は訳者注)

GenCon:毎年夏、インディアナポリスで開催されるアナログゲームの祭典。その規模は半端ではない。
 一年前、ウィザーズ社はGenConで総額$50、000のDreambladeのトーナメントを実施し、その後の賞金トーナメントのイベントも発表した。今年、$50,000を掛けた世界選手権はGenConで開催されたが、その一方でウィザーズ社は組織化プレイに対するサポートの終了も発表した。Dreambladeはマジックを盛り上げたシステムと同じモデルに則っていたのだが、ここからマジック:ザ・ギャザリングに対して何が言えるだろうか?

 いや、マジックが死につつあるとか、そういうことじゃない。

 Dreambladeは本当にいいゲームだ。それは一見単純そうだし(“一見”を強調気味で)。そのミニチュアにはパワーやタフネスがあり、移動や攻撃ができる。敵のミニチュアを除去したり、マップ上のキーになる部分を支配することでポイントが得られる。戦闘はマス目ごとに実行される。

 戦闘は特製の六面ダイスをいくつか振ることで解決する。六面はそれぞれ、外れ、外れ、1ダメージ、2ダメージ、3ダメージ、ブレードだ。ブレードが出るとミニチュアの特別能力が起動される。致命的命中とか、他のマス目に対する遠距離攻撃とか、大失敗とか、それに ― 一番価値の高い ― ミニチュアの他のセルへの移動なんかだ。

 例えば、あるミニチュアがどこかのセルで戦闘に参加し、ブレードを出して移動能力を使って別なセルへ移動する ― そしてその先で新たな戦闘に参加し移動を繰り返すことで、1ターンの間に全部の戦闘に参加することも可能になる(君のダイスの目が良くって、そのミニチュアが死ななかったらだが)。

 そして、対戦はどちらかのプレイヤーがあまり重要でないセルでの戦闘でブレードを出し、そのブレードで決定的なマス目にいる敵を追い出すことで決まったりもする ― そうすることで、そのマスの支配を得て勝利するわけだ。

 注目すべき点は、ミニチュアを使えるレベルにしているのは特殊能力だということで、これはマジックのクリーチャーを使えるものにしているのが能力だってこととほとんど似ている。考えてみればわかる ― 《塩水の精霊/Brine Elemental》が《針刺ワーム/Spined Wurm》の重くなったやつだからって、使わない人がいるかい?

 それとは別に、ミニチュアの見た目は単純にカッコいい。ウィザーズはデザインにかなりの金額を費やしてるようで、きちんと結果が出ている。

 こいつは、世間に評判のいいミニチュア、Unwishing Wellだ。

Unwishing Well

 ただ、問題は、このゲームが大変なことにある ― マジックよりもずっと大変なんだ。

 昨年、PTQとDreambladeの50Kトーナメントを2日で連勝したマディソンのプレイヤー、サム・ブラックによると、マジックを立て続けに10時間やることはなんでもないし、週に20時間以上やっても平気だろうし、その上楽しんでやれる一方で、Dreambladeの長時間のセッションはとにかくヘトヘトになるとのことだ。

World of Warcraft:Upperdeck社から発売中のTCG。同名の世界トップのMMORPGを題材にしていて、ネットゲーム内で使えるアイテムが当たるカード等独自のフィーチャーでヒットした。
VS:Upperdeck社から発売中のアメコミTCG。大規模賞金トーナメントを売りに、一時日本でもホビージャパン社のサポートを受けて日本語版が出ていた。
The Spoils:Tenacious Gamesから発売中のスチームパンクTCG。やはり賞金トーナメントを売りにしている。
 私も同意する。Dreambladeをプレイすることは、マジックやその他のライバルTCG(World of Warcraft、VS、The Spoils等)に比べてより厄介だ ― そして、ドラフトと構築の両方があるコレクション系ゲームの常で、テストプレイは成功のために欠かせないものだ。

 Dreambladeもコレクション系のゲームで、ミニチュアはブースターに入って売られている。各ブースターにはミニチュアが7体入っていて、レアが1つと、あとはアンコモンとコモンだ。Dreambladeの“ウォーバンド”はいわゆるデッキと同じもので、ミニチュア16体からなる。これはつまり、理論的に言えば、ブースターを3つ買えばゲームを遊ぶのに十分なフィギュアが手に入ると言うことだ。ただし、Dreambladeの小売価格は$14.99で、つまりウォーバンドを組むには$45を費やさなければいけないということになる。マジックでは、構築において適正な60枚のデッキを組むためにはブースターが4つ必要で、その総額はおよそ$16だ。

 ただ、そうやって組んだデッキはどれだけ使い勝手がいいかは皆さんご存知のとおり。Dreambladeも例外じゃない。

 もちろん、マジックのデッキを組むには土地が必要だ。Dreambladeでは、マップとダイスが必要になる ― しかし、この辺はスターターセットに入っている。

 また、Dreambladeは三ヶ月毎に新セットが発売されている。これはここ数年 ― 来年もそうなるそうだ ― のマジックの年間四セットと一致している。Dreambladeのセットはマジックよりも若干数が少ないが、ブースターの価格が高くなっているところを見ると、ウィザーズ社はゲーム用のミニチュアを集めるためのコストを、現在のマジックと同じ程度と予測しているようだ。一言で言えば、Dreambladeのコンセプトの背景には、マジックのコストと同程度のゲームのコストがあると言える。

 これがいい見解だと思うだろうか? いささかびっくりしないか?

 一年前、ウィザーズ社はGenConでDreambladeを立ち上げた。その中には、人目を引く高額賞金トーナメントがあった ― 賞金総額$50,000のイベントだ。トーナメントがきちんと動くようにするために、ウィザーズ社はイベントの進行のために経験豊富なマジックのジャッジを何人か雇った。これらのジャッジはDreambladeのルール試験等をパスしなければいけなかった ― しかし、結果として昨年のGenConでは、数多くの経験あるマジックのジャッジがイベントを回すこととなった。

 また、ウィザーズ社はGenConでDreamblade立ち上げ記念スペシャルパーティーを行い、その中でゲームデザイナーや会社のスタッフとの質疑応答が行われた。ジャッジは全員そこに参加していて、私らはセットについて色々話し合った。つぎ込む資金のレベルが適正なのか疑問に思う人もいた。私は(その当時の)コールドスナップの発売にからんで、マジックにかかるコストのコラムを書いていたばかりだったので、特に懸念していた。

Hecatomb:Wizards of the Coast社から発売されていたホラーTCG。ふちが透き通った五角形のプラスチックのカードを用い、カードを重ねることで強くする独自のシステムを持っていた。基本セットとブースターを2つ出し、現在はサポート終了。後のウズマジンの基礎となっている。
 発売イベントの質疑応答の大部分は、このゲームに対するトーナメントのサポートの発表に関することだった。ウィザーズ社は他にTCGやミニチュアゲームを販売している。D&Dミニチュアのように繁盛しているものもあれば、Hecatombのように失敗したものもある。この時点でウィザーズ社が確信していたことは、失敗したゲームは、それに対する高レベルのトーナメントのサポートが不十分だったということだった。Dreambladeにおいては、ウィザーズ社は1Kや10K等の一連のトーナメントを発表した。そこでは賞金が支払われるとともに、GenConでの年に一度の50Kのための予選ポイントが与えられることになっていた。

 1Kトーナメントでの賞金総額は$1,000、10Kだと$10,000で、以下も同様だ。さらにウィザーズ社は各地のショップが“エッジ”トーナメントを開催し、若干の予選ポイントとブースターによる商品を出せるようにした。構造的には、これはマジックのGPやPTQやFNMに非常に似ている ― しかし実際は、トーナメントに優勝しなくても予選を抜けることは可能だった。単純にものすごい数のエッジトーナメントに参加しているだけでも、それで1,000ポイントを貯めれば50Kに参加できるのだ。

 Hecatombにおいて、ウィザーズ社は実験を行い、そして失敗した。興味深く革新的なゲームだが、そこには目立つ商品やトーナメントのサポートがなかった。Dreambladeにおいては、ウィザーズ社は全面的にトーナメントをプッシュした。さらにDreambladeにおいて、その素晴らしいゲームメカニズムやクールなミニチュアの他にも、そこには ― 初日から ― 完全なトーナメント構造や熟練のジャッジ、しっかりした革新的なレーティングシステム、非常に素晴らしい賞金のサポートがあった。

 一年後、ウィザーズ社は今後の1Kや10Kを廃止し、エッジトーナメントと来年の50Kのみをサポートすることを発表した ― そして、新セットのリリースは、現在のセットの販売実績で決まることも。完璧な情報を求める人のために、以下にメッセージを引用する。

2007年7月17日

 皆さんは8月のDreambladeの50Kに向けてのウォーバンドの準備中のことと思いますが、皆さんの多くはDreambladeの組織化プレイの将来についてご心配のことと思います。

 我々がこのゲームをデザインしていたとき、我々はこのゲームを素晴らしいものにするためのキーとして、高いレベルの競技的組織化プレイを重視し、しっかりとした組織化プレイをDreambladeに提供していきました。しかし、我々の最大の努力にもかかわらず、トーナメントに参加するプレイヤーの数は十分とは言えず、我々はこれまでと同レベルのサポートをゲームに対して続けることができなくなりました。その結果、今後は1Kと10Kは行われなくなります。8月の50Kイベントはスケジュール通り続けられますし、エッジトーナメントもそのままです。我々はこのゲームが好きですし、皆さんもそうでしょう。これは苦渋の選択ですが、しかたのないことでもあります。

 9月に発売されるDreambladeの第5セット「Night Fusion」は、間違いなくこれまでで最高のセットとなることでしょう。そこには2年目のDreambladeのために我々が残しておいた様々な新要素が登場します。Night Fusionの成功があれば、我々はDreambladeの未来に需要があると判断できることでしょう。皆さんのこぞっての支援を期待しています!

 皆さんのDreambladeに対する情熱的とも言える支援や、今回の事態に関する我慢に対して感謝をいたします。今後もこの革新的なゲームを皆さんにお届けできることを心より願っています。

ジョナサン・トゥイート
Dreamblade リードデザイナー
Wizard of the Coast

 Dreambladeは死にはしないだろうが、「トーナメントでそれを盛り上げる」モデルは確実に死んだ。しかし、このモデルがマジックを元にしているとなれば、マジックの寿命に関して何かを言えるのではないだろうか?

 一言で言えば、さほど言えることはない。

StarCityGames.com:マジックを始めとする各種TCGの戦略記事サイト。一部有料。
 マジックの成功は、トーナメントとカジュアルプレイの二本の脚の上に立っている。トーナメントプレイヤーとカジュアルプレイヤーは互いを嫌っているかもしれないが、どちらもマジックの成功のためには重要なことだ。トーナメントがあることで人々は興味を持ち続け、インターネットの取材も盛り上がる。トーナメントがなければ、StarCityGames.comのようなサイトのヒット数もずっと下がるだろう ― StarCityGames.comのようなウェブサイトは、マジック全体に対して素晴らしいマーケティングとなっている。一方で、カジュアルプレイは売り上げを盛り上げている。

 ご存知のとおり、プロは(ブースタードラフトを除けば)あまりカードを買わない。これはDreambladeにおいても真実だ。サム・ブラックは最初のGenConのイベントに参加するための初のウォーバンドを組むために、ブースターをいくつか買ったそうだ。しかし、それ以降は、リミテッドのイベントに出れば十分なミニチュアが集まるため、購入する必要がなくなってしまったのだ。これは、その他の私がであった高レベルのプレイヤーについても真実だった。

 同じくらい重要なこととして、Dreambladeではドラフトの人気が出たことがないと思われる。Dreambladeでドラフトを行うこと自体は可能だが、そのためのコストは一人頭$45になるし、ドラフト自体も必然としてロチェスター式になる。私はDreambladeのドラフトが自然発生的に始まったのを見たことがない。ドラフトがなければ、商品自体もそれほど動かない。

 Dreambladeは構築とトーナメントのサポートをしているが、カジュアルや入門に関しては皆無といっていいほどごくわずかのサポートしかしていない。Dreambladeには構築済みのウォーバンドや、その他基本的なウォーバンドを構築するためのノウハウを示す方法がない。かってすぐ友達と遊べる基本ゲームもない。代わりに、スターターを二つ買う必要がある ― 不可能な話ではないが、ひどい状況だ。

 やがてトーナメントは、真剣に強いプレイヤーが新人プレイヤーを叩きのめす場になった。ゲームの学習曲線は険しく、技術や準備が報われるシステムだ。それは悪いことではない ― しかし、君のモチベーションがトーナメントにないのであれば話は別だ。私の地元には、サム・ブラックと彼の仲間がいる ― トーナメントの優勝が十分期待できる面々だ。それ以外のプレイヤーを見たことはあまりない。

 例えば、春のことだ。イングリッドは地元のショップでトーナメントを開いている。トーナメントが始まっていたはずの時間の30分後、私の携帯に電話があった。それはイングリッドからで、私に今近くにいるかを尋ねるものだった。トーナメントの参加者が3人しかおらず、認定のためには4人目が必要だったのだ。私はウォーバンドを持っていなかったので、それがリミテッドかを尋ね、彼女の答えがイエスなのを確認して、私はそこへ向かった。彼女が私の商品のためのお金をもってくれたのは少々驚きだった ― しかし、それは私がへまをして抜けたときに彼女が渡した1Kのトップ4用のピンバッジに比べれば大したことではなかった。(訳注:要するに、その3人しかいなかったトーナメントが、実はショップトーナメントなんかではなく1Kトーナメントそのものだったってこと。)

 プロは、自分だけではゲームを成功に導けない。そのためにはひたむきなプレイヤーたちが必要だ。いくつかの地方では、その手のプレイヤーが実際に存在していた ― しかし、その理由はショップのオーナーや熱心なプレイヤーがゲームを持ち上げ、駆け出しがウォーバンドを組むのを手伝い、大量のミニチュアをプレゼントし、とにかく新人プレイヤーを学習曲線に乗せてきたからだ。

 ゲームを盛り上げるための武器を純粋にプロや賞金に頼った結果、ウィザーズ社は他のゲームとの叩きあいの中にはまってしまった。賞金を目的としてTCGをプレイしている人々は、もっとも見返りのいいゲームを好む傾向にある。VSはUDEが無尽蔵の賞金をイベントに流し込んでいる間は巨大な存在だった。しかし、私はGenConでVSのプレイヤーやジャッジと話をしたが、VSのカジュアルプレイヤーは目に見えて激減しているとのことだった。カジュアルプレイヤーがいなくては、VSを続けていくための十分な売り上げは満たされない。何人かのプレイヤーは、今年のGenConでのイベントがVSの最後になるのではないかと考えているようだった。

 そしてもう一つ。マジック、the Spoils、その他諸々のTCGはポーカーとも戦っている。企業がどれだけの賞金を提供しようとも、ポーカーはその上をいっているのだ。

Management Material:Zipwhaa Inc.社から発売されたカードゲーム(非TCG)。いかに企業内の自分の地位を上げずに平として過ごすかを競うジョークゲーム。
 その一方で、GenConでは数多くの企業が、純粋にゲームそのものやカジュアル的興味の上にゲームを成功させようとしていた。企業ブースは会社によるゲームのデモがひっきりなしに行われていた。私はいつものように、いくつかを遊んでみて、そのうち一つを買った。ラインアップは変わり続けている。Management Materialといった素晴らしいゲームも、ある年に登場し、しばらく人気が出た後に消えていく。戦いとは残酷なものだ。

 今のところ、マジックは最高の地位にいるようだ ― 数多くのカジュアルプレイヤーのコミュニティと、最高級の競技がそこにはある。それは黄金ではあるが、そこに新たな何かを到達させるためには、多くの何かを必要とするのだ。

GenConでのDreambladeのジャッジ

EDH:Elder Dragon Highlander。マジックの多人数カジュアル向けフォーマット。デッキは“General”であるレジェンドを含む100枚デッキで、基本土地以外は1枚制限。Generalに関する特殊ルールがある。プロツアーのスタッフやジャッジの間で人気。
 今週は、マジックの技についてはあまり語らない。EDHもあまりプレイできなかったし、その他世間が興味があるようなフォーマットはぜんぜんやらなかったし。

 イングリッドはウィザーズ社がGenConでのイベントを企画していたときから、そこへジャッジとして招待されていた。彼女やジェフ・ヴォンドラスカは昨年の10Kのほとんどでジャッジを行っていた。さらにウィザーズ社は、昨年の50Kでのジャッジのほとんどを招待していた。ウィザーズ社はイングリッドと私に、Dreambladeのジャッジの報酬として航空券とホテルとGenConの入場証を確保してくれた。

 いけてるねって? その通り。

 その分、問題点もある。そのうち一つは、ウィザーズ社が木曜の最終予選のためにジャッジを一人必要としていたことだ。それも最後のやつ。私は飛行機のために午前4時に置き、そのままデトロイト経由でインディに向かい、ホテルに直行し、すぐさま会場に向かって入場証を手に入れてイベントを始めたが、その時点で時刻は午後10時だった。トーナメントを始める前に、16時間も起きてなきゃいけなかったって寸法だ。

 一方で“良い”ニュースはといえば、そこの参加者が8人しかいなかったことだろう。つまり、最初から3ラウンドのシングルエリミネーションになったってことだ。会場を出たのは午前2時を少々回ったところだった。プレイヤーにとっては素晴らしい事態とは言いがたいが、私にとっては良いことだ。

Axis & Allies:ウィザーズ社がAvalone Hillブランドで発売しているミリタリーミニチュアゲーム。
 金曜は休みで、少々の睡眠の後、私はGenConをチェックしに出かけた。パズルゲームやAxis & Alliesミニチュアやその他大量のゲームを楽しんだ。企業ブースもいくつか回ってみた。

 注:機会があるようなら、GenConにはぜひ行ってみるべきだ。こいつはとてつもなくデカい。企業ブースの広さは何エーカー(訳注:1エーカー≒4平方キロ)もある。いや、文字通りの話だ。ゲームのリストは数百ページにもおよぶ。そこはゲーマーのパラダイスだ。

 土曜日、仕事の始まりだ。Dreambladeの50Kは、公式には午前10時に始まった。ジャッジは会場に7:30から8:00の間に到着している。テーブルに番号札を並べ、組み合わせと順位表の掲示場所を決め、基本事項を確認し(ジャッジとして、例えば「トイレはどこ?」なんて質問に答えなくちゃいけない)、少々時間を使って特別なルールや起こりえる問題点の確認を行う。9:45にはプレイヤーミーティングが開始され、組み合わせは10時ちょっとすぎに掲示された。

 参加者は200人を少々下回るぐらいだった。

 最初の3ラウンドは構築戦だ。プレイヤーはあらかじめウォーバンドを組み、それで戦う。わかりやすいし、ジャッジにとっても楽だ。ジャッジの呼び出しはちょっとしかなかった。

 Dreambladeの会場の音はマジックとは異なる。その違いはすぐに明らかになった。ヘッドジャッジが「ラウンドを開始してください」とアナウンスすると、ダイスの転がる音が全体に響き渡る。その後は、トーナメント会場は(マジックのジャッジの耳には)奇妙なぐらい静かになる。プレイヤーはゲームに集中しているし、ジョークもほとんど出ない。何よりも、カードをシャカシャカやる音が聞こえないのだ。

 他のDreambladeプレイヤーの異なる点といえば、驚異的に礼儀正しいことだ。私は面倒な裁定を一つ引き受けた。プレイヤーは明らかにあることをしたかったが、その手順に少々混乱していた。対戦相手は私を呼び、プレイ進行を見ていてるように言った。また、そのプレイヤーは手順が適正かどうかも確認してきた。実際、手順自体は適正だったが、その結果はプレイヤーが望むものとは異なっていた ― 彼は手順を混乱していたのだ(Dreambladeに興味がある君たち3人のために説明すると、彼はあるセルにTrampleのダメージを与えようと思っていたが、一方でそのTrample持ちをそのセルにSkirmishで移動させようとしていた)。私は彼にその手順がうまくいかないことを説明した。そして、彼が自分の手順を実行し終わっていることから、そこからの巻き戻しを認めないことも説明した。彼はヘッドジャッジへ上告し、ヘッドジャッジも「君は自分のミニチュアがどう機能するかを知っている責任がある」とのコメントつきで私の裁定を支持した。

 ここがDreambladeとマジックのプレイヤーの分かれ道だ。彼は悪態をつくでも文句を言うでもなく、我々に対し制定を出してくれたこと、ジャッジを行ってくれたことに対して感謝の意を示した。さらに言うなら、この手の行動はDreambladeのプレイヤーにとっては普通のことだ。彼らは驚異的に素晴らしい人々なんだ。

 ラウンド5〜9はブースタードラフトだ。Dreambladeでは、ドラフトのポッドは4人からなる。各プレイヤーはブースターを3つ受け取り、ブースターを順に開封し、全員でビニール袋をミニチュアからはずす手伝いをしてそれらを並べる。ドラフト手順は基本的にロチェスターだ ― ただし、折り返しはない。

 問題は、DCI-Reporterにあった ― それはトーナメントを運営し、オポネントを計算し、組み合わせを作成するためのソフトだが、4人ポッドに対応していなかった。我々は8人ポッドを擬似的に作成し、それを手作業で4人ポッドに分割した。各ドラフトラウンドの組み合わせは手作業で行わなければいけなかった。

 このイベントのスコアキーパーはウィザーズ社の社員であるスコット・ララビーだった。彼は想像できるかぎり最悪の仕事を引き受けていた。ドラフトラウンドが開始されると、私は新たなジャッジの仕事、スコアキーパーの護衛を行うことにした。基本的にはスコアキーパーの近くに来るあらゆる人の妨害をし、90もある組み合わせに彼が没頭できるようにするのがその内容だ。

 他にも、マジックとDreambladeのプレイヤーには違いがある ― Dreambladeのプレイヤーはドロップしないのだ。二日目の遅くになっても、会場には150人を超えるプレイヤーがいたが、その多くはとっくに賞金圏内から外れていた。彼らがゲームをしていたのは、単にそれが好きだからなのだ。

 ソフトの問題と、ドラフトが3回、合計9ラウンドを行ったという事実により、トーナメントは遅くまでかかった。終わったのは午前2時ごろだった。16時間もの間、ずっとコンクリートの上に立ちっぱなしだったとしたら、十分長い時間といえるだろう ― しかし、多くのジャッジが働き続けていただけでなく、休みを取るためには息を引き取る以外にないと考えているような状態だった。

 私がジャッジの人々が気に入っている理由がここにある ― 彼らは信じられないほど長い時間働き、文句一つ言わない。彼らのほとんどは最後までひたすら働き続ける。その信念の元となる一例を示そう。下位テーブルには、予選を抜けた双子の兄弟がいた。彼らは六歳だった。彼らの父も参加していた ― 最終予選を抜けたのだ。少年たちは午前2時になっても楽しそうだった。そして彼らは、翌朝のプレイヤーミーティングの席にもきちんと現れたのだ。

 ソフトの問題は、ラウンド終了時に長時間の調整をかけることとなった。中でもあるラウンドがすこぶる最悪だった。あるゲームが時間いっぱいかかり、さらに追加のターンを行い、その後にジャッジが呼ばれ上告が行われ、これが全部ラウンドの終了後に行われたのだ。それが解決した後、スコットは組み合わせの作成に入った ― これがまた時間がかかる。マジックのプレイヤーならジャッジをボッコにするところだろうが、Dreambladeのプレイヤーはそれでも礼儀正しかった。

 他にもDreambladeプレイヤーの様子を示してみよう ― 11歳のプレイヤーが、自分の構築ウォーバンドをなくしてしまった。不運なことだが、この手の事態は必ず起こりえる。しかし、それが会場内に伝わるや、Dreambladeプレイヤーは力を貸してくれ、ドラフトが終わる頃には、そのプレイヤーの手元にはレアを含む元のウォーバンドと同じものが届けられたのだ。

 日曜日は、言ってしまえば、事件は何もなかった。ジャッジは8時前に会場に現れ、プレイヤーミーティングは9時少し前から始まり、構築戦スイスラウンドが3ラウンド行われてトップ8が決まった。私はトップ8のテーブルを担当したが、唯一の問題点は起きていることだった。私は立っていなくちゃいけなかった ― 座っていると、ただちに寝てしまいそうだったからだ。

 決勝は3:30に終わった ― 時間通りだ。というのも、TCG会場は4時に閉鎖になるからだ。我々は荷物をまとめる手伝いをし、それをパレットに乗せ、部屋に戻ってシャワーを浴び、素晴らしいディナーとEDHで午前3時あたりまで楽しんだ。

 EDHはポカをやらかして一回負けたが、再戦は勝利した。

 次回は ― もっとマジックについて書くよ。

 約束だ。

 ― PRJ


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