マジック:ザ・ネクスト・ジェネレーション by Anthony Alongi

――子供に遊び方を教える正しいやり方

(オリジナル:http://www.wizards.com/default.asp?x=mtgcom/daily/aa113

 もし君らがマジックを数ヶ月以上遊んでるんなら、自分ほどのプレイ経験の無い誰かと会うこともあっただろう。毎月毎月、マジック:ザ・ギャザリングの世界には新しいプレイヤーが生まれている――このゲームが大好きな友達の友達とか、かつて遊んでて一時期止めていたものの、最近の新しい何かが昔遊んでたものに似ていたんで戻ってきた人とか、そしてもちろん、ルールの何たるかを理解できる歳になった子供たちなんかだ。

 今回お時間をいただこうってのは、この最後のグループに関してだ。カジュアルプレイヤーというものは、マジックの世界でたくさんの役割を持っている。しかしその中でおそらく一番重要なのは、まだまだこの世界のわかっていない若いプレイヤーを助けるのに時間を割くことだろう。別にトーナメントプレイヤーにこの役割ができないってわけじゃない――彼らにもそれはできるし、えてしてそれを望んでたりするんだし、間違いなくその技術もあるだろう――が、カジュアルプレイヤーのほうがもっと適任だということだ。彼らだってその気になるだろう。彼らは地元のショップで、いろんなデッキでいろんなプレイヤーと遊んでるんで、次のトーナメントに向けて特定のデッキと作戦を頭においてる人たちとはわけが違うんだから。それに、君らならゲームを学びたい誰かと喜びを分かち合うためにプロツアーを勝つ必要が無いんで、そいつは確実に良いことだろう。

 そんなわけで、次の世代にゲームを教える役割は、基本的の俺たちの担当ってことになる。まあ君らの中にはすでに若いのを手助けしてるプレイヤーが少なからずいるのは疑いの無いところだが、実際に大部分はそんなチャンスが無い(あるいは避けている)だろう。とにかく両方のグループに、今回は考える材料を提供していこう。

見習いに対する3つのステップ

 まずはカリキュラムを見ていこう。マジックは難しいゲームだ。でもそれを教える手順を3つの段階に分けることで、事態はより簡単になるだろう。

 1)基本の目的と道具:新人プレイヤーがまず覚えなきゃいけないのは、何が目標なのかと、そのために何が必要なのかってことだ。その具体的な内容はというと、

 流れの中で、回避とかクリーチャー除去とか、色々教えたくなるのが自然だろう。だけど、まだだめだ――今のところはヒントにとどめておけ。最初の1〜2ゲームは、とにかく地上の動物が行ったりきたりする程度にシンプルにしておく。マナカーブ(なんて難しい言葉は使わないほうがいいが)がちゃんと動いてるかとか、ゲームの流れを掴んでるかとか、ライフが減るにつれ緊張が高まっているかとか、その辺をよく見ておこう。

 2)中級の目的と道具:ここで言う“中級”には二つの意味がある。一つは、一歩進んだコンセプトの事だ。君らだって別系統の勝利条件(デッキ切れとか毒カウンターとか)を長いことかかって説明する気もないだろう。とりあえずは、プレイヤーが殴り合いで勝利を目指すようになるまで、その手の物はお預けだ。

 最初の1〜2ゲームが終わったところで学ぶべき他のコンセプトには、回避能力(飛行はまあここで出てくるだろうが、トランプルも忘れちゃいけない……それと一緒に、ブロックがらみの側面攻撃とかシャドーあたり)や、プロテクションや場に出たときの能力を持っているクリーチャー、クリーチャー除去、ゲームに影響するクリーチャーでないパーマネント(《罠の橋/Ensnaring Bridge》がどれだけゲームを厄介にするかとか)なんかがある。

 一方、俺が“中級”というときのもう一つの意味は、君らが究極の目的にたどり着くまでの中間地点の目的と道具のことだ。例えば、君らがその人物とプレイしている最初の数ゲームのある点では、自分自身のライフを得ることがテーブル上のリソース(優良なブロッカーとか)ほど重要じゃないって事を指摘する時のような、胸の痛む瞬間があるだろう。あるいは《火の玉/Fireball》でクリーチャーを2体倒して、ついでにカード・アドバンテージの基本について語ったりするかもしれない (あんまり理論的に過ぎるなよ! ほとんどの人々はカードは選択肢で、選択肢は多いほど良い事を理解してるんだからな)。

 言い換えれば、君らが弟子をどうやって勝つのかを理解できるよう育て上げるんであれば、彼らに教えるべきは勝利の確率を増やすことのできる中盤の色々な出来事ってことになるだろう。

 3)作戦:それなりに(まあ10ゲームから15ゲームって見当か)進めば、そろそろ「こうすべきだ」とか「こうすべきじゃない」なんて事を言わないで済ませるようにできるはずだ。最初の数ゲームは、新人プレイヤーに何ができて何ができないかを教える時間を割くのに最高のタイミングだ。そりゃまあ、そっちの1/1でこっちの3/3に突っ込んできてもいいさ。いや、そっちの《ショック/Shock》じゃ《清純な天使/Pristine Angel》は焼けないよ。ああ、そっちの《帰化/Naturalize》《怨恨/Rancor》とか《ダークスティールのガーゴイル/Darksteel Gargoyle》に撃つことはできるねぇ。

 この手の行動は無益なんだろうが、新人に基本的なミスをいくつかさせることは、君ら(や俺)がごちゃごちゃしゃべるよりもはるかに効率がいい。何が起こるかやらせておけ。彼らが笑ってるんなら、先に進めばいい。彼らが真剣に不満そうなら、ちょっと戻ってやればいい。他に余計なごたくは並べなくていい。このやりかたは、かつて君らにも覚えがあるように、うまくいくことになっている。君らがちょっとだけ手伝ってやんなきゃいけないのは、道を外れないようにすることだ。

 じゃあ、君の友人に戦略上のアドバイスを受ける準備ができるのはいつか? 彼らが聞いてきた時さ。一週間の間に20〜30ゲームやって、それでも相手が君らのぽつんといる《電結スリス/Arcbound Slith》じゃなくて3枚目の平地に《忍び寄るカビ/Creeping Mold》を撃ち込んできて頭にくるようだったら、まあ色々と控えめな提案をしてやればいいだろう。これを行う最高の方法は、自分自身の行動に関する批評をして見せることだ。「ここの選択はなかなか面白いぜ。俺は《稲妻/Lightning Bolt》を、そっちの《突風売り/Squallmonger》《巨大戦車/Juggernaut》かのどちらかに撃つことができるんだ。俺はライフで勝ってるから、多分《巨大戦車/Juggernaut》に撃つのが最善手だろうな。どう思うよ?」 君らが正しければ、安堵のため息を一つついて、結果が語るに任せればいいさ。間違ってたんなら、そいつを認めて笑い飛ばせばいい。こっちの手札なりデッキには31,276通りの対処できるシチュエーションがあったのに、相手がトップデッキしてきたのがよりによって《とどろく雷鳴/Rolling Thunder》だったって幸運について、長い説明をしてやるのも――まあ、それは新人の役には立たないだろうが (もっと経験を積んだプレイヤーの役にだって立たないんだけどな)。

 最初の一ヶ月ぐらいで上がってくることを望む戦略上の疑問点は、デッキ構築やプレイングのこのへんだろう。

 正直な話、俺がすっかり忘れてるマジックのルールや戦略に関する一面なんか、少なくとも1ダースは下らないだろう (ルールブックなりウェブサイトなりをチラッと見るだけでもすぐに見つかるに決まってるんだ)。それが何だかわかるかい? 関係のないことさ。このリスト外のことは、それを知らないことでゲームがまったく楽しくなくなるってことが無いかぎり、君らの友達が聞いてくるまで足しちゃいけないぜ。そいつとは今後何週間、何ヶ月、何年とゲームしてくんだ。俺たちの中には、5年たっても10年たってもまだゲームを学んでるやつすらいる。何を急ぐんだ? ゲームを楽しもうじゃないか。

歳相応の行動

 君らの弟子にどう教えていくかは、そいつが何歳かって事――そして君らが何歳かって事に大きく依存している。このコラムの目的においては、俺は君らが教えている相手に対して少なくとも2〜3歳年上だと仮定している。

 世の中には、俺の提案なんかよりはるかに要点をわかってる教育理論のエキスパートがいるだろう。君らも教育とかその手のプロだってんなら、俺の説明に自分自身の直感を加えていきゃいい。そして、当然教えられる人物は別人なんだから、頭を使わなくちゃいけない。

 12歳以下の場合:一般的に、この年代は練習すれば、戦闘関連の計算とかマナ・コストとかはちゃんと理解できる。問題は、何かをプレイしているときには、やつらには1ターンより先のことは見えてないことだ。カードアドバンテージとか消耗戦の話は、少なくとも数ヶ月は深く突っ込みすぎちゃいけない。“ガキ向けカード”が存在するのには理由がある――ガキはそういうのが好きなんだ。でも、そんなときたましか出てこない重たいビーストを嫌がるんじゃなくて、むしろ(自分の時代から数年の皮をむいた)そんな自分に満足してはどうだい?そいつは何て言うか、ここ20年間で初めてトランポリンを飛んだようなもんで、面白いと思うぜ。

 13歳から17歳の場合:この辺の年代だと、子供だって長期的な結果をにらんだ短期アクションというものを理解してくる (もちろん、運転記録が示すように、やつらは平均的にろくでもない。まあ、30ぐらいになるまでは)。“カードアドバンテージ”とか“マナカーブ”といった単語は、このグループにとってはより意味を増すし、より速く理解してもらえる。もっと言うなら、このレベルのグループに物事を教える一番いい方法は、無慈悲に叩きのめすこと……ごほごほ、まあなんだ、注意深く見守ってやって、やつらの文句を聞いてやることだ。

 真面目な話しをするなら、このレベルの子供はもっと若いやつよりしょっちゅう目にすることになるだろう。やつらは自分たちで地元のショップに通うんだからな。だから、やつらを育てて、やる気を出させてやろうぜ。子供のそばに親がいるようなら、そいつらにはきちんとした態度をとろう。

 18歳以上の場合:ここまでに書いてきたように、このコラムは若い連中と付き合うやり方をメインに書いてきている。この年齢の場合、君らはここまで俺が書いてきてやり方をもっと加速してやれるだろうし、そもそもその手の人間はより知った仲(例えば、大学の同級とか、仕事の仲間とか)だろうから、そもそも俺のアドバイスも意味が無いだろう。思うとおりにやればいい。

 どの年代の人物と当たるんでも、とりあえず本来の自分のやつよりも簡単なデッキを2、3個持ち歩くと役に立つだろう (だからって赤緑に限るってわけじゃないぜ。まあ、そういう結論が出ても驚かないけどな)。

教授殿、まずは汝を教えたまえ

 時として、俺は自分らマジックのプレイヤーを型にはめてみることがある。そいつは非常に面白いことだ。なんで、ここでやってもいいかい? どうも。

 俺たちは高度に知的だ。そして、みんなにそれをわかって欲しい。俺たちは早口で、難しい言葉を使い、面白げなトリックを使うことでそいつを見せびらかしたがる。男性の場合、自分らが認めるレベルの倍はこんなことをやっちまう。教える立場の女性だとすると、まあそんなことはありえないな。

 君らがこの型にはまっていようがなかろうが、これだけははっきりしておくべきだ。教えることにとって、自意識は最大の敵だ。逆に言えば、謙虚さこそ一番の友であるべきだ。“生徒”側の立場に立って、難しいゲームと格闘することがどういう感じなのかを把握しておくことは、非常に役に立つだろう。

  1. マジックを覚えるのは大変なことだ。そいつは、壁は高いが得るものも大きい計画なんだ。マジックプレイヤーの99%は、「ダメージをスタックに積む」とか「状況起因効果」なんてコンセプトに何べんも鬱屈をためてきただろう。それらが君らにとって単純明快だってんなら――まあいい、そういうことにしとけ。君らの弟子はそれがどう簡単かなんて聞きたくもないだろう (ただ、やつらも君らがかつてメカニズムXにどれだけ混乱したかなんて話で互いに笑いあうのは好きなもんだ。そいつは、君らにも残ってるなら、いい感覚だろうな)。
  2. 負けることはイライラすることだが、究極的には君らにいいことだ。若いプレイヤーを盛り上げるために意図的に負けてやるかどうかは、あくまで君らにかかっている。個人的には、俺は愛の鞭ってやつの信者だな。俺にはまだこのゲームの面白さをわかってくれない8歳の娘がいる。だからって、俺が彼女をこっぴどく叩きのめしたってわけじゃないぜ。何べんもその手を考え直すよう諭してやったし、彼女がゲームの状況を十分把握して完璧な手を打って俺を負かしたこともなんべんもある。そうした時には、彼女は学べたことがわかるだろう。
  3. 君らがどれだけ長いことプレイしてきたんであろうと、世の中には君らに対して色々と教えてくれるマジックのプレイヤーがいるもんだ。その人物が、自分が今教えるべき人物なのかをきちんと考えること。君らが考えもしなかったルールの質問なんかが飛んでくるかもしれないから、気をつけなきゃいけない。君らが意識しないままずっと疑問にしていた問題を照らしてくれるミスが起こるかもしれない。そもそもマジックとは何の関係もない結果になるかもしれない。いずれにせよ、目と耳を大きく開いておけ。

 他人を教えることに時間を割いてくれる君らに祝福を。ここで示した点は、マジックにという物にとってはごく小さなことで、むしろ他の人とどう付き合うかということの話だ。少なくとも、君が与えた分は得るものがあることを願うね。


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