抜き打ち意地悪テスト

ブライアン・デビッド=マーシャル

Original Article:Pop Quiz with Trick Questions
Translated by Yoshiya Shindo

 さあ、抜き打ちテストだぞ。HBの鉛筆出して、用紙の一番上に名前を書く。余計なものは全部しまっとけよ ― もちろん、私語は厳禁な!

問1:

 プロツアー・アムステルダムのエクステンデッドの部で適切である最も古いセットのエキスパンション・シンボルは何か?

問2:

 プロツアー・アムステルダムでのエクステンデッドの禁止カードリストに含まれるカードは何枚か?

 はい、鉛筆置いて。問1に「砂時計」と書いたのは何人いる? 7月1日発効の禁止制限リストの発表により、エクステンデッドがこれまでとは全く違うものになった。カードプールはずっと小さくなり、これまで適用されてきた7年分のカードといささか古風なローテーションのシステムが、ここ4年分に改正されたわけだ。つまり、アムステルダム ― 新フォーマット初のメジャーイベント ― に向けて60枚デッキの構想を練っているデッキビルダー諸君にとって、カードを使用できるセットは、時のらせんブロック、ローウィン・シャドウムーアブロック、アラーラの断片ブロック、ゼンディカーブロック、それと第10版以降の基本セットになる。また、ミラディンの傷跡が発売されたら、新フォーマットのカードはローウィン以降のカードってことになる。

 Wizards社の開発部メンバーのエリック・ラウアーの説明によれば、このフォーマットはPTQシーズンに採用されるのでもないかぎり、ほとんどプレイされていないということだ。カード資産を追いつくための長い年月の差と圧倒される量のカードプールを前に、スタンダードのお気に入りが外れた後の道筋をより立てやすくするバージョンのエクステンデッドの必要性が急がれたんだ。

 「自分のカードがスタンダード落ちした後のプレイヤー ― エクステンデッドは、そういうプレイヤーがその後も自分のカードを使って参加できることを想定したフォーマットでした」とラウアーが説明してくれた。「エクステンデッド枠が7年だと、追いつくために多くが必要になります。今回の方式なら、追いつくのに必要なのは1年分だけです。あなたがスタンダードを2年やってきたとして、新たなセットによりスタンダード落ちが起こった場合、気にしなければいけないのは1ブロックだけです。かつてのエクステンデッドをプレイしたいと思った場合、さらに3年分を追いつく必要があったんですからね」

スコット・ララビーとマーク・ローズウォーター
 DCIプログラムマネージャー ― そして「今週のあれこれ」のレギュラーコメンテーダー ― のスコット・ララビーによれば、エクステンデッドとスタンダードの間を埋める、「ダブル・スタンダード」と呼ばれていたフォーマットを作るという話も出ていたそうだ。しかし、ここ数年のエクステンデッドのイベントへの参加者を目の前にして、彼らはすぐに他の必要性に至ったとのことだ。

 「明らかになったのは、第三のフォーマット ― ダブル・スタンダード ―を作る代わりに、すでにあるものを修正するべきだということでした」とはスコットの談。「はっきりしていたことは、エクステンデッドというフォーマットはうまくはいっていなかったことです。プロツアー予選でも毎年エクステンデッドは最低の参加者でしたし、Magic Onlineでいま一つでしたし、エクステンデッドのプレイヤーを増やせなかったことで、トーナメント数はエクステンデッドよりレガシーの方が多くなったのです」

 Wizards社にとって昔のカードを使えるようにするフォーマットを作ることは重要なことであり、予定ではエクステンデッドがその役目を担うはずだった。しかし、実際に安定した成績を残したのは、よりカードを集めるのが大変なはずのレガシーだったんだな。プレイヤーが一旦レガシーのパーツを集めてしまえば、その古いカードでほぼ永遠にゲームに参加できる。しかし、これはローウィン時代のキスキンデッキやアラーラの断片時代のジャンドデッキを使い続けたい新参プレイヤーが、古いカードを見つけるために時間をかけなきゃいけないってことが数に入っていないんだ。

 「結局プレイヤーは現状を判断し、レガシーをプレイすることにしたんです」とスコットは続けた。「で、あるプレイヤーがレガシーに移行する一方で、他のプレイヤーはそこに参入するには厳しすぎると判断したのです。我々が提供したかったのは、7年枠のエクステンデッドやレガシーではなく、もうちょっと楽な場所への軟着陸でした。我々は、新しいカードに投資してくださったプレイヤーに対し、ブースタードラフトやスタンダードの先の何かを選択肢に加えて欲しかったのです。」

 スコットはさらに、各基本セットは、そのセットの前に最後に発売されたブロックと一緒に処理を行うことを説明してくれた。第10版未来予知の次に発売されたので、ミラディンの傷跡の発売後に時のらせんブロックがフォーマットから落ちるのと同時に落ちることになる。一方、マジック2010ローウィンブロックと一緒に落ちるわけではない。これはアラーラ再誕の後に発売されたものであり、あと2ブロック分は生き残るんだ。

 「スタンダードはすでにこれを実行しています」とスコットが説明を加えた。「実際にそれが実行されたことはありませんが、ミラディンの傷跡が発売されたら、マジック2010はスタンダードから落ちます。かつては2つの異なるローテーションのルールを使っていました ― 新ブロックの登場と、新基本セットの登場です。我々はこれを、1回で全部をローテーションさせることにしたのです。この結果、マジック2010マジック2011はスタンダードで3ヶ月ほど同居することになりますが、この2つのセットは元々重複するカードが多いですからね」

 それじゃ、時代を間違ったコールドスナップは? このセットは発売当初の状況から《暗黒の深部》をもって復活したわけだ。このセットを基本セットと同様にフォーマット落ちさせるかはいささかの議論があったが、最終的には、新フォーマットは最新4ブロックとそれに対応する基本セットってことでより綺麗にまとめることで決定が下されたんだ。

 私はスコットに、この新生エクステンデッドのフォーマットに対する予想を聞いてみた。FNM主催者は、旧エクステンデッドフォーマットを選択することができなかった ― この、より顧客視点に立ったバージョンは、お近くのWPNのロケーションに近々登場することになるだろうか?

 「我々が考えていることの一つがそれです」と彼は答えた。「一晩空けたら世界中にエクステンデッドのトーナメントがわらわら立つとは思ってはいません。それは我々の計画ではありません。長期計画として、新たなエクステンデッドを旧エクステンデッドよりも人気のあるフォーマットにしたいのです。我々が望んでいるのは、このフォーマットがレガシーよりも幅広くプレイされることです。レガシーは素晴らしいフォーマットですし、私にとってもお気に入りではありますが、レガシーには限界があるのは厳然たる事実です。デュアルランドの数にも限りがあります。プロツアー・アムステルダムは、この新エクステンデッドのフォーマットが真にその姿を現す場所です。また、これは世界選手権でも採用されるフォーマットの一つです。そして来年の春の予選シーズンへと続きます。2011年の1-4月のPTQシーズンは、2011年の2番目のプロツアーに対する予選となりますが、使用されるのはこのフォーマットです」

 さて、ここまでで新フォーマットには神河ブロックが入らないことがわかったわけで、そうなると現在禁止されている《師範の占い独楽》もカードプール外ってことになる。それじゃ、問2の答を見直してもらおう。問題は「プロツアー・アムステルダムでのエクステンデッドの禁止カードリストに含まれるカードは何枚か?」だったな?

 答を書き直したいものもいるだろうし、コラムのタイトルからして答が0ってことはないだろう。で、「2」って書いたやつはどのぐらいいる?

 この新たに形成されたフォーマットでは、プレイヤーは《弱者の剣》や《超起源》を使用できないんだな。マジック開発部メンバーのエリック・ラウアーによれば、どちらのカードもまもなくフォーマット落ちするし、この方針を決定した人々は、デッキビルダーが新たなフォーマットを開拓する余地を確実に残し、ようやら《虚空の杯》の枷から逃れたフォーマットを、単純に「ソプター・デプス」として知られるコンボデッキの半分を担うアーティファクトや超起源デッキが流行する事態にはしたくないという考えなのだ。ラウアーによれば、Wizardsはフォーマットの初期から禁止カードを作ることに関しては割りと寛容であり、このエクステンデッドの始まりにおいても同様だったことを指摘している。

 「エクステンデッドが生まれた当初に、我々が《巨大戦車》を禁止した前例を思い出す人もいるでしょうね」とラウアーはくすりと笑った。「禁止カードの数はわずかですし、これらはいずれにせよすぐにフォーマット落ちします。プロが明らかな選択肢を取り除かれたこのフォーマットに対してどう出るか、本当に期待していますよ」

エリック・ラウアー
 歴代の中での最高のデッキデザイナーの1人であるエリック・ラウアーには、アムステルダムでこの新たなフォーマットを解析しようとするプレイヤーが実にうらやましそうだし、他のどんなアーキタイプが登場するか、それに対して人々がどう立ち向かうかを眺めるのを待ちきれない様子だ。最も良い成績を残したコンボデッキが消えた穴を、PTQシーズンで好調だった《風景の変容》デッキのようなコンボデッキが埋めるなんていう予想をするのは簡単だろうが、エリックは話はそこまで単純じゃないと我々に解説を続けた。

 確かに《死せる生》や《風景の変容》デッキはいい成績を残すかもしれないが、だからといって自動的に圧倒的成績を残すわけではない。エリックによれば、プレイヤーがエクステンデッドのメタゲームの一角を成したであろうそれらの脅威に対しエネルギーを大量に注力していれば、その分《風景の変容》も成功を収めるかもしれなかったろうとのことだ。しかし、新たなメタゲームにおいてそれが有名なデッキとなれば、プレイヤーは対抗手段を準備してくるだろう ― 特に、《暗黒の深部》のメタゲームから開放された環境であればなおさらだ。

 「今回のイベントに自分が参加できていたら、皆が知り尽くしたこれまで通りのエクステンデッドよりも、デッキを組むのがずっと楽しかったでしょうね。」と彼はちょっと残念そうに語っていた。


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