(オリジナル:http://www.wizards.com/default.asp?x=mtgcom/daily/aa78)
数週間前、俺は君たち多人数ゲームのグループのために、新しいフォーマットのアイデアをいくつか考え出した。今回は、その中の一つであるまったく新しいフォーマットを紹介しようと思う。
“マーセナリー”は、俺が“何でもかんでも”デッキを作っているときに思いついたやつだ(訳注:日本では“プレーンズウォーカー”と言った方が一般的かな?)。これは、何らかの条件の下に、グループ全体にある種のランダムな効果を発生させる、独立したデッキのことだ。俺はこのデッキに、《大理石のタイタン/Marble Titan》とか《火口の乱暴者/Crater Hellion》あたりの、当時どのデッキにも入っていなかったクリーチャーをどんどん放り込み始めたんだ。
それと同じ頃、俺は数週間前に別な誰かがグループに紹介してきた"浪人"フォーマットを思い巡らせていた。今回それを詳しく紹介することはしないけど、基本的なアイデアは、自分がピンチのときに、他人のデッキとか、場合によってはプレイヤーとかを雇うことができるっていうものだ。
で、俺はクリーチャーカードをひらひらさせながら、戦士を雇うというルールを考えて、そこから今回紹介するアイデアを思いついたわけだ。まずはこのルールを一緒に考えて、数日前にはテストプレイにも付き合ってくれた、俺のグループの仲間に感謝をしておこう。俺はこいつでうまく行くと思っているけど、他のグループは自分たち用に適当に調整してくれても全然かまわない。
マーセナリー・ゲームの目的は、君たちが普段遊んでいる普通のマジックとまったく同じだ。マーセナリー・ゲームは他のどのフォーマットにも――エンペラー戦のようなチーム戦でも、フリー・フォー・オールであっても――放り込むことができる。基本的には、今やっていることにちょっとしたひねりを足すってことになるんだな。
マーセナリー(傭兵)は、君があるタイミングごとに、マナ・コストを支払わずに雇うことのできるクリーチャーのことだ(ご心配なく――別なものは払う必要がある)。そいつらはあらかじめ誰かがデッキとして準備しておく。ほとんどにおいて、それは他と同様の普通のクリーチャーだ――殴ることも、ブロックすることも、対象にとることもできる。破壊したり、かっぱらったりといったあらゆることは、普通にプレイされたものと同様に行うことが可能だ。ただし、大きな例外が2つある。1つ目は、上にも書いたけど、そいつらを手に入れるのにマナ・コストを支払う必要はない。2つ目に、マーセナリーが死んだら、そいつの代わりを手に入れることが可能だ。詳しくは後ほど。
このフォーマットを使う場合、各プレイヤーの“ターン開始フェイズ”には新たなステップが追加される。そいつはアンタップ・ステップのさらに前に置かれるけど、ご希望とあらば別な場所に持っていってもかまわない。アクティブ・プレイヤーは10面ダイスを1個振る。その目が8〜10だったら(まあダイスは何を使ってもいいけど、成功率は25%から35%ってあたりにした方がいい)、そのプレイヤーはマーセナリーを1体雇うことが可能になる。
ここが雇用の重要なポイントだ。雇わなくてもかまわないけど、雇うことに決めたら絶対にコストを支払わなければいけない。コストがどれだけになるかは、雇うことを決めるときにはわからない。だから、君は手に入れるものとリスクを天秤にして、決断をしなくちゃいけない。
雇うことに決めたら、あらかじめシャッフルしてあるマーセナリー・デッキの一番上をめくる。そいつが君のクリーチャーだ。そいつが場に出る前に、君はコストを支払わなくちゃいけない(もうちょっとルールっぽく言うなら、「このカードの雇用コストを支払って場に出す。そうしないなら、君はこのゲームに敗北する。」ってあたりだな)。
各クリーチャーのコストをわかりやすくするためには、紙にメモした奴をスリーブの中に入れておくのが一番いいだろう。単純に"1"とか"2" とか"3"とかでいい。そのうち、こんなものが無くったってわかるようになるだろう。
数字の“1”とか“2” とか“3”は、払わなくちゃいけないポイント数だ。それぞれのポイントをどう払うかは、君の選択に任されている。以下はお勧めのポイントの支払い方だ。
1ポイント =
手札を1枚ゲームから取り除く or
7点のライフを失う or
2つの土地でもトークンでもない自分のパーマネントをゲームから取り除く or
ライブラリーの一番上から20枚をゲームから取り除く。
なんで、1ポイントのクリーチャーを手に入れたら、7点のライフを失えばいいし、2ポイントのクリーチャーなら、7点ライフを失った上でライブラリーの一番上から20枚のカードをゲームから取り除けばいい。3ポイントだったら、自分がコントロールする土地でもトークンでもないパーマネントを6個取り除けばいいってことになる。
この支払いが終わったら、君のマーセナリーは君の手札からプレイされたかのように場に登場する(こうすれば、《触れられざる者フェイジ/Phage the Untouchable》や《霊体の先達/Karmic Guide》が美味しくなるだろう)。こいつが場に出ることが決まったら、アクティブプレイヤーから始まって、プレイヤーは呪文や能力をスタックに積む機会を得る。ただし、こいつが場に出ることは確定している。打ち消すことは不可能だ。
俺としては、このルールでゲームから取り除かれたものは《生ける願い/Living Wish》とか《Ring of Ma'ruf》とかで取り戻せないことにした方がいいと思うが、こいつは決めの問題なんで、君のグループで調整してすればいい。
君が雇ったマーセナリーは、他のクリーチャーと同様に生きているかぎり君の下にいることになる。ただし、こいつは若干根性が無い。こいつが場を離れた(墓地とかライブラリーとか手札とかゲーム外とかに行ってしまった)場合、こいつはトークンのように永遠にゲームから取り除かれる。そしてさらに悪いことに、他のプレイヤーは君のマーセナリーを《支配魔法/Control Magic》あたりでかっぱらうこともできる。最悪の事態だ!
で、こいつの埋め合わせをし、このフォーマットを本来の"何でもかんでも"デッキの感覚に合わせるため、マーセナリーが君のコントロールを離れるたび、君には自動的に別なマーセナリーを雇えるオプションが発生する。もちろん。コストは払わなくちゃいけない。
そのうち、みんなが"マーセナリー転がし"をやり始めるようになるだろう。マーセナリーの中には、いい奴もいればそうでもない奴もいる。更なるオプションは後述。
マーセナリーのデッキがなくなってしまったら、プレイヤーは新たなマーセナリーを雇うことはできない(すこしはやつらにも休みをやろうぜ!)。
君は同時に2体以上のマーセナリーをコントロールすることはできない。そうなった場合、こいつはレジェンドのような状況起因効果の影響を受けると考えて欲しい。君はどちらか一方を選んで生け贄に捧げなければいけないし、このとき代わりのマーセナリーは呼べない(まあそんなわけで、あるマーセナリーがいる状況でもう1体をめくった場合、すでに出ているマーセナリーをコストとしてゲームから取り除くことは可能だということだ)。
レジェンドの話をするならば、時としてマーセナリーで出てきたクリーチャーが、すでに場に出ているレジェンドと同じという事態もありえる(《クローサの拳カマール/Kamahl, Fist of Krosa》とか)。俺たちはこいつを“不幸な事態”と呼んでいる。君はマーセナリーのコストを支払わなければいけなく、なおかつそいつはゲームのルールに従って状況起因効果で墓地行きになる。しかし、この場合でも代わりのマーセナリーを呼んでかまわない。まあ、だいぶ痛い経験だったとは思うがね。
と、これがルールのほとんどだ。ここまでのルールは、やってみれば簡単に覚えられるだろう。もうちょっと支払いを複雑にしたければ、後述の“コスト0”のクリーチャーや"ビッド"のクリーチャーを入れてみればいい。簡単なままにしておくのもいいだろう。どちらにせよ、この文章は印刷して手元においておいたほうがいい。特に、グループ内の最初の何回はね。
もちろん、ここに挙げたものにこだわる必要は無い。ここでのポイントは、クリーチャーに正しいコストを見合わせることだ(クリーチャーのコストを決めることは、開発チームがセットごとにやってることを思い起こさせるね!)。《苔犬/Mossdog》あたりを3ポイントにして仲間を混乱させる誘惑に駆られるかもしれないけど、長い目で見れば面白いものにはならない。世の中はえてして不公平なもんだからね。
それぞれのグループでは、色ごとにマーセナリーを提案している。他にも選ぶ方法はあるだろう。自分は、それぞれのレベルで強さのバランスをそろえるようにしてみた――だから、あるグループで赤が弱いとか思うんなら、ちょっと強めなものを入れてみるとかするといいだろう。
きちんと貢献してくれるやつら
コスト:1ポイント
ここに属するのは、君がプレッシャーにさらされているときに息を継がせてくれる、一般的に言って使えるカードだ。単体で勝てるクリーチャーというわけではない。
ゲームのひっくり返し屋
コスト:2ポイント
こいつらは、いい勝負(あるいはいい勝負よりちょっと負け気味)ぐらいの現状を、自分の流れに持っていってくれる。文句なしの優れものだ。
問答無用
コスト:3ポイント
こいつらは純然たる殺戮マシーンだ(本当は《茨の精霊/Thorn Elemental》あたりはここに来てしかるべきなんだが、いまいち信頼性のない《種子生まれの詩神/Seedborn Muse》が1ポイントに来てることだし、バランスだよバランス!)。
ああ、確かに青はちょっとごまかしてるさ。ただまあ、それぞれの色からベストのクリーチャーを選ばなくちゃいけないし――《変異種/Morphling》は起動コストにが入用だ。また、《サンダーメア/Thundermare》がここに来てる理由は、“雇用ステップ”がアンタップよりも前にある点による――その後で自分のクリーチャーを全部アンタップして、誰かをぶちのめしてしまうってことが可能になってるからな。こいつがお気に召さないようなら、《真紅のヘルカイト/Crimson Hellkite》をそこそこのクリーチャーとして3ポイントに持ってきて、低い方には何か別なクリーチャーをあてがうといいだろう。黒には最強の3ポイントクリーチャーがごまんといるけど、そいつらは俺のデッキに入ってるんで、手元に1枚しかない《触れられざる者フェイジ/Phage the Untouchable》を入れることにしよう。
上に示したカードでデッキを準備した場合、2つほどちょっとした問題点が出てくる。第一に、マーセナリーを雇うリスクがまだ低いこと。第二に、カードが18枚しかない状況では、あっという間にデッキを使い切ってしまうことだ。これは、君のグループが5人以上なら特に顕著になる。
ということで、そういうときのために以下の追加のマーセナリーを検討してみるといいかと思う。
相手にもお役立ち
コスト:0ポイント
こいつらにはコストを払う必要が無い。というのも、こいつらは自分自身が他のプレイヤーを助ける形で登場するからだ。こいつらはマスクス・ブロックのクリーチャーで、投機に対しそれなりのリスクをもたらしてくれることになる(まあ、それでもこいつらは無料のクリーチャーなんだからな)。
色によりけり
コスト:1ポイントか3ポイント
ここまでのリストに《変異種/Morphling》がいないのはひどい話だろう? というわけでここでの連中は、それぞれの色に対し非常に友好的な大物だ。もちろん、起動コストがあるようなクリーチャーは、多人数ゲームではろくなもんじゃない。それでもまあ、こいつらは目を引くだろう。
こいつらがめくれたら、その起動コストのうち1つでも利用可能なマナ源が自分にある場合、君は3ポイントを支払わなければならない(マナ源がタップしてようが何だろうが、場にあればいい)。
そうでなければ、これらのクリーチャーは1ポイントだ。
他にも、インベイジョンの5体のドラゴン・レジェンドもいいだろう。この場合、2ポイント(起動できない場合)か3ポイント(起動できる場合)になる。
ビッドの開始
コスト:色々
ここのクリーチャーは、もちろん、いつでも必要だというものじゃない。こいつらがめくれた場合、君はまず選択をする。全員にこのクリーチャーが要るか要らないかを宣言するわけだ。いずれにせよ、君が0ポイントでビッドを開始する。対戦相手は誰でも、これより高いポイントで対抗し、逆の結果をもたらすようにすることができる。ビッドは誰かが勝つ(そしてポイントを支払う)まで続けられる。
対戦相手は、ビッドで勝ってもこのクリーチャーを手に入れられるわけではない――コントロールする権利を争うわけではなく、状況の承認を争っているんだな。
ビッドの結果、このクリーチャーが出ないことが確定(つまり、要らないを選択して勝つか、要るを選択して負けるか)した場合、次のマーセナリーはめくれない。それじゃ都合よすぎるからな。
《寄生牙のマンタ/Wormfang Manta》が出たときには、すでに自分のターンに入っていることに注意。このターンを終了させた後、次のターンを失うことになる。
変異
コスト:色々
オンスロート・ブロックの偉大なるカード群を入れないなんて、そんな恥知らずなことはできないだろう? ということで、こんな風にしてみた。
変異クリーチャー10〜15枚を、別なデッキにまとめておく。で、雇用できる状況になったときに、メインのマーセナリーのデッキから雇うこともできるし、変異のマーセナリーのデッキから雇うこともできるようになるわけだ。そのカードはコストを支払わずに、裏向きに場に出す。
そのクリーチャーの変異コストは、変異コストの点数で見たマナ・コストになる――したがって、変異マーセナリーの変異コストがだったら、そいつの変異コストはだということになる(こうすれば、みんなが変異を楽しめるだろう)。そのクリーチャーを表向きにする場合、それが自分の色であろうがなかろうが、そいつの変異が完了する前に、君はそいつの“点数分の”コストを支払わなければいけない。
お勧めの変異クリーチャーと点数を挙げておこう。
ここのルールには、面倒臭いものなんか一つもない。こいつは(俺の知るかぎり)まったく新しいフォーマットなんで、ぜひともやってみた感想を教えて欲しい。フィードバックがたくさん来るようなら、その内容に応じて、こいつに関する新たな一工夫をコラムにするつもりだ。
お楽しみあれ!