「夜と昼の恋歌」

translated by Yoshiya Shindo
(Original : http://www.wizards.com/default.asp?x=mtgcom/feature/145

 ウィザーズ社への質問コーナーに毎週送られて来るメールの中には、大量のマジックのフレイバーやマジックの世界設定に関する質問があります。そのほとんどは、現在のエキスパンションに関するものです。アクローマはどうしてそんな風に行動するのかとか、どうして兵士には口が無いのかとかですね。しかしそんな中に、数多くのメールの源となる昔の話題があります。それが「夜と昼の恋歌(The Love Song of Night and Day)」です。

 質問は「『夜と昼の恋歌』は本当にある詩なんですか?」とか「それは本になってますか?」などです。いい質問ですね。実際、この題名はミラージュやビジョンズのテキストのうち17枚に登場してるんですからね。

 はい、この詩は実在しています。ウィザーズ社に長くつとめる編集者であり、たびたびThe Duelist誌に寄稿していたジェニー・スコットが、ミラージュの物語の舞台となるドミナリアの一角、ジャムーラの世界設定の一環としてこの詩を書きました。

 以下は、この詩の全文です。


夜と昼の恋歌

by Jenny Scott

男(夜)女(昼)

君を着飾る服きらびやか赤紫の絹の布
共に祭へ走って行こう陽の昇るまでさあ踊ろう
ドワーフ太鼓は空ろ樹仕立て縞馬革で軽やかに
竹馬乗りの技は鮮やか竹笛吹きの音は清か

夜半過ぎれば現る詩人語り部たちと演じ入る
踊る言葉のその楽しさに聞き手喝采焚火の辺
酔わせて欲しい魔法の言葉語って樹や草 河や風
真が嘘と戦うその訳真がいつも勝つ訳を

父が語った話をしよう大蟷螂が樹に化けて
かの死神をごまかす様を象が踏んだと知りながら
子豹の敵を討つふりをして山羊九匹を狩る豹を
海賊 ジンとの博打に負けて金より大事を失うを

今宵は二人の別れの宴冷えた粥では足りはせぬ
パパイヤ パインにマンゴも剥いて椰子のミルクも飲み干して
バナナを焼いて 鰐を並べて野鳥や亀もテーブルに
河馬も揃えば良いのだけれど先に捕らえてこなくては

石の宮殿そこに建てよう門の護衛は河馬の兵
君の食事は虎で運ぼう空飛ぶ縞馬捕まえて
君はその背に跨ればいい小屋に並ぶは一角獣
蝶や火竜は空を舞い行く君の庭先彩って

青のビーズで長紐編むの王しかまとわぬその色を
石鹸石で雌獅子を彫るのそれを木箱に堅く閉じ
周りに飾るはサファイヤの護符象牙細工と駝鳥の羽
私去ってもあなたを守る尽きせぬ愛を詰め込んで

君の言葉は鳥の歌声すべて優しく語る歌
走る姿は優雅で速く滑らかで猛き黒い豹
妖しく変幻するカメレオン幾重の女を一時に
鋭く強きは雌獅子のようで穏やかなるは縞ガゼル

二人いられる最後の日ならあの草原を歩きましょう
この手を取ってゆっくり進む子供のような眼差しで
ダラジャの平原 共に歩くの樹上に潜む豹がいて
下がる尻尾は影に揺られるエルフ住む樹のすぐ近く

サバンナ渡るはいと素晴らしき愛する人と二人なら
獅子の歩むは堂々として群れを率いて進み行き
戦い前夜はしばしの休み色濃き蛇はとぐろ巻き
枝に絡んで底意地悪く村への道をつと狙う

無数の白蟻住み着く塚は原野にそびえる堅き塔
とがった耳の猫は交互に数多の巣穴を見張りつつ
籠かと見まごう鳥たちの巣はアカシアの樹に腰をすえ
犀に竜すらその場かぎりは私たちに道譲るよう

闇の帳を裂く稲妻や天の鳥打つ水しぶき
泥の原野を翼で叩き白蟻に蛙 逃げ急ぐ
目指すはともる村の灯りか蜘蛛は身体を乾かして
天井住まいの斑ある蜥蜴落ちてこぬかと待ちぼうけ

森の炎が明らむ空に黒雲重く広がって
白毛黒毛の聖なる猿は子供抱えて時を待つ
稲妻のように閃く愛は心に火花を投げかける
炎は広がり曲がり打ち据え隠れ家さえも打ち壊す



思い出すのは子供の頃に共に羊を追った日々
草深き丘を導き行ったあなたの杖と戯れ歌に
私は笑い 日の暮れる頃あなたの語りに酔いしれる
あなた寝そべる私の隣私はあなたをただ想う

君の祈りは心に残る君は明るく大人びて
生真面目な様はまだ不似合いで去ったその日は娘だが
帰った君の姿は戦士数多の兵の一員で
髪は短髪 目には刺青赤い戦の三角紋

恋人よ 明日私は旅立つ束ねた髪と刺青で
私の盾には太陽があるあなたが共にいるように
金の象眼輝く様は消えぬ残り火 戻る日は
蜥蜴の皮をあなたの靴に黒い眼で待つ人のため

私は太陽 そう君は月君の行く先 追い続け
この広い空横切っていく命と愛のあるかぎり
疲れ果てるまで陽は月を追い力戻るまで抱いて待つ
再び前を走るその日を私も愛し君を抱く

愛しいあなた 陽と月ではなくむしろ二人は昼と夜
古き言葉に 昼は女で明かりある間に働いて
山羊を追いかけ魚捕らえて玉蜀黍を実らせて
子供がそれを眺める脇で潜む毒蛇を追い払う

昼愛す夜は闇に働き銀河の明かりを友として
すばやく星を腕に集めて籠一杯に積み上げる
それは子供が蜥蜴捕らえて壷に放ると良く似てて
壷に蜥蜴が溢れるように籠には光が溢れてる

夜の外套 黒と炎でまたたく星を内張りに
夜明け黄昏 愛を求める空のうねりを乗り越えて
ほんのつかの間互いを見やる口づけ投げて涙する
涙はジャムーラに満ちて溢れ血と混じりあい赤く染む

それでも一度 魔術師の手で時は止まって昼のまま
ジャムーラ中に夜は広がり昼を包んで抱きかかえ
奇跡のように二つは混じり一つとなるの でもやがて
夜は昼から引き剥がされる西の彼方の命ずまま

愛しい人よ 私は望みを決して捨てはせぬだろう

二人の愛は長雨の後水を抱えた夏の河
しばしの間は岸を潤しその地に実りをもたらして
でも熱風に水は干上がる昼と夜とのそのように
私はあなたと離れるけれど空の彼方から眺めてる
あなたは変わりはできないのだし私もきっとそうだから


 訳注)リンクをクリックすると、その部分にフレイバーが対応するカードが表示されます。ただし、日本語版のカードのフレイバーは参考にしていません。文章がつながらなくなるしね。

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